SSブログ

伝統は「守る」ものなのか [早稲田と慶應]

東京六大学野球・2014年春のリーグ戦が閉幕した。

最終週の早慶戦で慶應が連勝して勝ち点4で早稲田に並び、さらに勝率で上回って慶應の優勝であった。

初戦は慶應・加藤拓、早稲田・有原が踏ん張って僅差の試合、二戦目は一転して乱打戦ながら、慶應が打ち勝った。


三塁側&左翼応援席(慶應の応援席に固定)には何度も足を運んだことがある私だが、一塁側&右翼側(早稲田の応援席に固定)には行ったことがなかったので、早大に赴任して最初の早慶戦である一回戦に応援に行ってきた。

初めて外から慶應の応援を見て、また早稲田の一員として応援してみて、これは由々しきことがあると感じた。

長く、スポーツ推薦制度のない慶應は早稲田に対戦成績で大きく水をあけられてきた。しかしそんな実力差がはっきりしていた時代であっても、「早慶戦は別、なめてかかると必ずやられてしまう」と早稲田は気を引き締めていた。それは応援席の醸し出す独特の雰囲気である。サッカーなどでわかるように、この観客席はパワーになる。

(一回戦に限定したことだとは思うが)慶應側は小中(高も?)が音楽の授業で応援歌をしっかり練習し、応援パターンもしっかり知った上で集団で応援に臨んでいたようだった。実際、今から38年前、慶應義塾中等部の一年生であった私もそうやって慶應の応援歌の大半を覚え、土日続けて応援に行って声が嗄れたものだった。

そのときに思ったのは
「早稲田の応援はすごい」
ということ。特に紺碧の空を歌う様、コンバットマーチの圧倒的な迫力。それに比べると慶應はもしかしたらお上品すぎるかもしれぬ。ダッシュ慶應もそれほど威圧感がある曲とは思われなかった。

だが長く時を経て今回、全く逆の感想を持った。
「慶應の応援はすごい。それに対して早稲田の外野の応援は弱い」


早稲田は今年度応援部が人数的に少し手薄である。リーダー部に幹部が2人しかいない。何度も見たところで、主将の仁熊君、副将の木暮君、2人とも素晴らしいリーダーだと思う。早慶戦プレイベントの慶應のリーダーたちと比べてもこの2人のすばらしさは際立っていた。だが質より量という部分もある。舞台に上がった2年生はまだまだ経験不足だったし、応援席に入って直接応援を指導する下級生部員の数も足りなかった。

こういうことはあり得る。応援部の諸君の日々の努力をわかっているものとして、入ったばかりの新入部員も含めて彼らを非難する気は毛頭ない。

しかしなぜ応援が上手く行かなかったのか。一番の問題は、応援席に詰めかけた満員の学生諸君が、応援歌・応援曲や応援パターンを知らず、応援部のリードに乗れなかったことにある。

例年、youtube に応援パターンが上がっていて(たとえば2014年度はこれ。その1 その2)、それを見て勉強すれば確かにわかるようにはなっている。

だがそれをどの程度みんなが勉強してくるのかというと、はなはだ心許ない。かくいう私自身も1度見ただけできちんと覚えられないままにスタンドに来てしまった。それ自体恥じることではあるが、そういう衆愚を何とか動かして応援をしなくてはならない。

結局、「○○チャチャチャ」「○○ハイハイハイ」といった単純な応援パターンが主になってしまい、その昔、三塁側から見て感じた威圧感などとはほど遠いものだったように思う。

昔はyoutubeもなかったのだから、応援を知る方法もなかったはずだ。しかし圧倒的な迫力があった。

それは偏に、応援パターンが多くなりすぎたことに起因すると思う。

慶應側応援席にも長く入ったことはないが、慶應も応援パターンが増えてきている。今風のリズムの応援曲・応援歌が入ってきている。連ねてみると、おそらく4,5倍にはなっているだろう。だからなかなか簡単には覚えられない。それを一糸乱れずやっているのはすごいと思うが、それでいいのだろうか。

早稲田の応援パターンも4つほどだったと思うが、なぜそれを全部やろうとするのか。

その結果、一つ一つが手薄になっているのではないか。

昔と違って、野球のルールでさえ怪しい人も多いようだ。そのなかでの応援を昔の調子でやることは難しい。

いい方法を考えようではないか。伝統は守るものではない、毎年積み重ねていくものだ。今は今のやり方があってよい。応援練習会のようなものをたくさん行うのも良かろう。応援歌の楽譜を冊子にして出版するのも必要だ。出来ることは色々ある。

がんばれ応援部。

nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 4

細田

sobu先生の野球応援に寄せる熱い想いと、論旨明快な文章は、早慶両校の現役部員にも是非、読んでいただきたいと思いました。

また、慶応では、月曜に野球が開催される際には、付属校ですら、授業は1限のみとされているのとは対照的に、早稲田では、そのような決まりが定められていないということを、社会人になってから知った次第であります。

sobu先生の今後の改革案の中に、野球試合の開催時における神宮外苑における学外講義が、カリキュラムに含まれることを期待します。
by 細田 (2014-06-17 22:40) 

EMTT

早稲田にいかれたのですか。教育界から離れられるようで、残念ですが、これからのご活躍を祈念しております。
さて、このエントリに重大な誤りがありましたので、指摘いたします。

早慶戦は、正しくは慶早戦です。

これからも宜しくお願い致します。
by EMTT (2014-09-06 10:11) 

sobu

細田さん 私のような不勉強な者が、このような学外講義を担当する資格はありません。慶應の応援歌はほぼOKですが、まだ早稲田の応援歌はほとんど知らないので、まだまだ修行が要ります。
by sobu (2014-09-10 14:22) 

sobu

EMTTさん いわゆる教育界に何かをする立場ではなくなり、自分で直接的に学生に影響を与え、社会に送り出す立場になりました。それもまた巡り合わせだと思います。

早慶戦か慶早戦かについては、日韓関係か韓日関係かの違いですので、早大教授たる私は「早慶戦」と言います。合計38年間も「慶早戦」と言ってきたので、まだ引っかかりはあります(笑)

by sobu (2014-09-10 14:27) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。