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歴史の証人になった [音楽]

倉敷の出身で、プラハを中心にご活躍中のソプラノ・慶児道代(けいこ・みちよ)さんのリサイタルに行ってきた。(2018.2.2 東京文化会館小ホール)

最近は東京でマスタークラスを何度も開催され、小さいコンサートもやっておられるようなのだが、なかなか聴きに行くチャンスもなかった。2000年に滞在していたプラハでオペラを確か3つ,その後プラハに行ったときにコンサートを1つ,岡山でもコンサートを聴かせていただいたのだが,それからも10年以上の日々が経つ。自分の身体が楽器である声楽家は年齢とどう付き合っていくのかという問題もあるかもしれないななど、色々な興味も持ちながら行ってみた。
曲目はオール・チェコ・プログラム

1曲目。スメタナ「夕べの歌」全5曲。あんまり楽しくてすぐに終わっちゃった。知ってる曲なんて一つもない。ナレーターの西田多江さんの歌詞の解説もあって入りやすかったとはいえチェコ語ですぜ。でも楽しかった。本当にあっという間に終わってしまった。

2曲目。ドヴォルザーク「聖書の歌」全10曲。旧約聖書のチェコ語訳だし、もちろん知らない曲。スメタナ楽しかった~という余韻のまま、歌詞の対訳解説も読まず、ナレーターの解説を少し聞いて曲に入る。1曲目。ぐっと引き込まれる。すげえなこれ。そして2曲目が始まってすぐに動けなくなる。おいちょっと待て、ソプラノのリサイタルだぞ。コンサート会場で背中に電気が走って動けなくなるのはいつ以来だろう。そのまま喜びや神への感謝に満ちた慶児さんの表情に引き込まれ,終曲でまた背中に電気が。こんなに練れた,全身全霊を込めた歌に触れたのはもしかしたら初めてかもしれない。

休憩。立てなかった。

後半。ヤナーチェク歌劇「イェヌーファ」第2幕ハイライト。イェヌーファの独白。主人公の戸惑い、喜び、憂いと大きな変化が現れる大曲。このオペラは見たことがないのだが、ナレーターの解説がうまく情況を説明してくれたこともあるのだが、1人で完全に舞台が見える。いや違った。ピアノの石井里帆さんもすごい表現力だ。客席は完全に世界に引き込まれてしまって夢の世界だった。
そして最後。ドヴォルザーク歌劇「ルサルカ」抜粋。ピアノとナレーターと慶児さんだけで完全にオペラを再現してしまった。もちろんあるはずのない舞台が見える。これはプラハで一度見たのだけれど、その舞台が蘇ってきて、いやいや、それは違うよもっとこんな舞台かな、などなど。もうお客さんは完全にNarodni divadlo に連れていかれている。

なんと幸せな時間。

アンコール。ドヴォルザーク「新世界」2楽章より「遠き山に日は落ちて」。堀内敬三の歌詞なのだが、たぶん慶児さんの音楽の道に対する思いが重なっているんだろうな、という素晴らしい演奏。

聴きに来た人は,歴史に残るすごい場に立ち会えた幸せ者だと思う。



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