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役人の忖度 [社会について]

最近流行っている?言葉の1つが「忖度」。こんな言葉を知らなかった人も多いかもしれないし、また辞書を引けばとかいう話もあちこちに解説があるのでそこは任せることにする。

今なぜこれが注目されているか。それはアベちゃん近辺のスキャンダル?絡みで出てきた言葉だから。で、最近まで役人組織にいた者として、またもっと広く一般に、日本の組織の問題として整理しておきたい。

まず言われている“スキャンダル”に着目した形で言うならば、

役人や政治家が金品をもらってその贈り主に有利になる何かをしたりしろと命じたりしたらそれは明らかな収賄となり、これは犯罪。

で、巷ではそうでないときの話が議論されているようだ。

政治家にしろ上級役人にしろ、自分の職掌のすべてを完全に把握することはできない。できれば凄いだろうけれど、ほとんどできないし、ある意味ではすべきでないかもしれない。命令を出すだけでもそう簡単にはできない。だからその下の実行部隊が「上」の意向をくんで企画立案し、(一応)お伺いを立てて決裁を得てからことを起こす。

それを「忖度」という表現で済ませるならばその通りである。そうでなければ大きな組織は回らないわけで、それ自体を悪く言うのは妙な理想主義者だけである。

ただし気になるのは、たとえば国立大学法人は、文部科学省の意向を「忖度」してことを進める。学問の立場から見ればすべきでない「改革」であっても、お上の意向はこうであるらしいからそちらへ向ける。実際、違う方向を出そうとする必ずお咎めが来るので、そうせざるを得ないのである。しかしあくまでも各大学が「自主的に行った」という体がとられるので、お上が責任を負うことはない。知っている話で言えば、鳥取大学が早々に教員養成の看板を下ろしたことなど、後々禍根を残すことはわかっているのだが、「自主的」なのでお上は知らん顔だ。

 過去の収賄事件を見ると、常に争点になるのは「職務権限」の問題だ。明文的に職務権限がないのなら、それは罪に問われないことになっているようだ。「政権党の実力者」「議会のドン」みたいなのも、職務権限で言えば何もないということで、お咎めは受けないことだったらしい。近年法律が変わって、そんな感じのことで辞任せざるを得なくなった閣僚がいたが、結局刑事罰を追及する話にはならなかったらしい。

だが問題は「忖度」によって行われた事案だ。まず最初に確認しなくてはならないのは、職務権限の有無ももちろん大切だが、それがどんなことであれ、最終的に責任を取るのは政治家でなければならない。なぜなら役人組織(公務員)は主権者たる国民・住民のためにあるものであり、その有り様を審査するのは選挙以外にないから。

しかしここが難しい。「忖度」で行った事案に問題が生じたとき、その責任は誰が取るのか。本来的には政治家であるべきだ。少なくとも「忖度」がその政治家の意図に沿ったものであるならば。しかし役人組織は、政治家に責任を取らせ(ようとす)ると後々どういうお咎めが来るのかを考えている。だから役人組織はそうならないように、与党政治家を守ろうとする。政治家は知らん顔をする。それは自分たちの立場や組織を守ろうとする本能のようなものだ。

だから役人組織は色々なことを隠そうとする。一方、政治家は(明言するかどうかは別として)役人のせいにして責任逃れをしようとする。

ここまでが基本的な構図であると私は考えている。そして残念ながらここまでに責めるべきところはあまりみあたらない。

 昨今話題になっている問題に関して。偉い政治家の周辺に動きがあるとする。本来権限は何もないはずの政治家の家族がやっていることであっても、その政治家の影をみて役人が(勝手に?)「忖度」しているというのが話題になっているわけだ。政治家は選挙を経ているとしても家族は違うじゃないか、みたいな議論はさておく。いずれにせよ起きたことに対する責任はその政治家にあるはずだ。

 まあそう言い切ってしまうと、役人に政治家を追い出すためのパワーを与えることになってしまう。その通りだ。特に政権交代が少ない我が国で数年前にせっかく起きた政権交代では、時の与党が役人を悪者扱いしたもんだから、サボタージュで抵抗されて二進も三進も行かなくなってしまった。あれは役人パワーで政治家がつぶされた例だと思う。アメリカのように政権交代が起きれば上級から中級まで多くの役人が入れ替えられる。その方が健全だというのは確かにそうだ。

 最近色々聞こえてくる話の中で、その「忖度」が偉い政治家に近い人に利益をもたらすような話だった点は確かに問題である。官有地払い下げにおいて、不当な値下げが行われたのなら、それが「忖度」のなかで行われたことであったとしても最終的な責任はその政治家にあるだろう。金品の授受がなかった(逆向き?)としても、少なくとも国会の場で「一切関係ありません。何かあったなら議員辞職する」とか息巻いちゃったのだから、それはそうしてもらうしかない。

 一方、一見似たような別の事案も話題になっているようだ。また偉い政治家の近辺の人が「得をする」ような状況になっているのだという。その構図で何でもかんでも一緒くたにするのは賛成できない。こっちでは「土地の無償提供」が話題になっているが、地方ではそういうことはたくさんある。そうまでしても事業を興したい地域はたくさんある。最終的にそれが地域のためになることであれば、ある種の投資だろう。むしろ問題は、許認可の恣意的な運用なのではないか。許認可の塊みたいなところに長くいたので、それを個人的な事情で運用されるとなるとそこには違和感を持つ。

 こういうスキャンダル?話については、個人的な感情はさておき、あくまで一般論に則ってものを言おうと思う。今の政府は、教育についても軍備についても国を滅ぼす方向へ進めていると思うし、国会軽視も甚だしく、それは主権者たる国民を冒涜することになっているので、そういう人には反対したいけれど、話はきちんと分けて考えたい。それは明治14年の政変のなかでつまらないことで政府から追放された大隈さんを思ってのことでもある。まああれがなければ今の自分の職がないのかもしれないが。



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