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欧米型の大学教育ねぇ [教育について]

見過ごしていたずいぶん前の記事を読んだ。

「入学は簡単だが卒業は難しい」 大学教育の欧米スタイル導入はなぜ失敗したか 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授]
Diamond Online 2014年8月22日 
http://diamond.jp/articles/-/57998

なかなか面白い発想である。サッカー日本代表には、世界のトップリーグで活躍する選手が何人もいるのに、その選手が思いの外機能しなかった理由をこういうところに見ているのはさすがである。

個人的な回想をする。

長らく卒業研究を指導してきて、そして現職でも講義の枠組みの中ではあるが、私が学生に対してやってきたことは何か。

それは
まじめでツルンときれいな学生を毛羽立てること
である。

長年、言われたことをまじめにこなす。一生懸命調べて覚えてくる。ここまでは方法論さえ指導すれば何とか出来るようになる学生たちを相手にしてきた。現職ではそれを超えた学生もたくさん見受けられるのが頼もしいが、とにかくそういう学生に対して言ってきたことは
正解はない。あったとしてもそれを聞いて満足するな。疑え。
である。そしてそれを超える手段として、論理的にきちんと説明できること、その展開に自分自身が疑いを持たなくなるまで練り上げることを指導してきた。

必要なのはまず自分から何かを能動的に出していくことである。最近は「アクティブラーニング」とかいうかけ声が聞こえるが、大学教育レベルで聞こえるそれは,大半が格好をつけているだけで実質性を持っていない。言われたことだけを一生懸命覚えて身につけてくる学生を能動的な態度に変えさせるのは、相当に強い力を持ってしなくては無理である。時として学生に対する強いプレッシャーを掛ける必要が出てくる。そのときまでに学生との個人的な信頼関係を築いていなければなかなかそうは行かないのだ。

この記事にあるような若者の姿--むしろわがままにどんどん進んでしまうこと--をベースに物事が勧められればそれでいいのだが、現状はそうではない。だから彼ら彼女らを「毛羽立てて」やることが必要なのだ。その上で初めてあのような教育が出来る。

ちょうど今、早大で初めて、ゼミ形式の授業をしている。
文系の学生に 英語で書かれた 数学のテキストを
使わせている。「無謀だ」とか、「早稲田だから、優秀だから」などと言われるかもしれないが、本質的にはそういうことではない。さらに自らどんどん考えを進め、疑問をぶつけてくるようなことでないとついて行かれないような仕掛けを作っている。講義の前に質問に来ることはもちろん歓迎するが、当然「答え」は教えない。「これで合ってますか?」という質問にも答えない。そういう丁寧な指導を経て初めて欧米の大学のような教育へ向けることが可能なのが、我が国の現実だ。

ここに上げた記事はその指摘として非常に良記事である。

で、大学のセンセたち、どれぐらいそれをやってる/やってきたんだろう。折しも「国立大学には文系学部は要らない」と言ったお上の言い分が聞こえてきたが、大半のところでは言い返せるだけの教育をして来なかったわけで、辛い状況だ。


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