早稲田はいかに人を育てるか [教育について]
この本は、自分の人生を決める本だったのだとあとから思った本を紹介したい。
見ての通りである。早稲田大学が創立125周年を迎えた2007年に出版されている。出てすぐに読んだのだが、その記録はネット上には残っていない。しかし自分の心には深く刻み込まれていたのだ。
当時は国立大学の教員であり、塾員(慶應義塾大学卒業者)でだったわけだが、当然ライバル早稲田のことは気になっていた。そこで出たこの本とその周辺で報じられた内容に深く感銘を受けたのだった。
慶應義塾よりも23年遅れて開校された東京専門学校=早稲田大学は、大隈さん個人の人気や、卒業生が多く広く活躍していることもあって、「偏差値ランキング」でも長らく慶應義塾よりも少し上の評価を受けていたように思う。だが気がついてみれば、今世紀初頭の段階ではこの早慶の序列がひっくり返っていた。もちろんそんなランキングはくだらないと言えばそうだが、その理由が大学における教育の質に起因するのではないかということに当時の関係者が気づいたのだろうと思う。
慶應義塾は湘南藤沢に横断的に学問を行う2つの学部を作った。色々な試行錯誤を続けながら結局社会で大きく評価されるようになった。そのほかにも教育にずいぶん力を入れているとみられたのだろう。
対して早稲田は長く、卒業生が「オレは早稲田には何もしてもらっていない」と言ってのけるような状況(これは私の従兄弟2人が私に直接言った言葉である)。
それについては、こんな本を読んでいたことを思い出した。
91年に産経新聞で連載された記事をまとめて92年に出された本である。私は初版本を読んでいて、手元に残っているが、その後文庫化されるほど売れたようだ。
その冒頭に、「早大政経だけには行くな」と言われていたという話が上がっている。教育の質の低下をズバリ突いた厳しいルポ。これでは長期低落は免れないと考えた早稲田大学の、社会に対する高らかな宣言。それが冒頭で紹介した本書である。
ちなみに本書では「もっと早い時期から改革を始めていた」とあるが、そのことについては当時は全く門外漢であった自分にはよくわからない。首肯する資格はないし、否定する根拠もない。だがそんなことは今となってはどうでも良い。
当時は英語教育の「テュートリアル・イングリッシュ」という科目が軌道に乗った頃であった。現在はそれに「アカデミック・ライティング」「数学基礎プラス」「情報教育」「統計リテラシー」という4部門が加わっている。その「数学基礎プラス」の担当として採用されたのが自分である。
この本を読んで6年後、今の私のポジションが新規にオープンになったのを知った自分は、本当にうれしく感動した。そして是非その仕事をしたいと思ったのだった。
現在はまだ目一杯それに関われているわけではないが、この感動を思い出したくて、最近本書を古書で再度購入(とっくに絶版)。手元にあった92年の本と合わせて、改めて読み直している。
これが今の早大教授たる自分の原点なのだから。
早稲田はいかに人を育てるか 「5万人の個性」に火をつけろ (PHP新書)
- 作者: 白井 克彦
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2007/01/16
- メディア: 新書
見ての通りである。早稲田大学が創立125周年を迎えた2007年に出版されている。出てすぐに読んだのだが、その記録はネット上には残っていない。しかし自分の心には深く刻み込まれていたのだ。
当時は国立大学の教員であり、塾員(慶應義塾大学卒業者)でだったわけだが、当然ライバル早稲田のことは気になっていた。そこで出たこの本とその周辺で報じられた内容に深く感銘を受けたのだった。
慶應義塾よりも23年遅れて開校された東京専門学校=早稲田大学は、大隈さん個人の人気や、卒業生が多く広く活躍していることもあって、「偏差値ランキング」でも長らく慶應義塾よりも少し上の評価を受けていたように思う。だが気がついてみれば、今世紀初頭の段階ではこの早慶の序列がひっくり返っていた。もちろんそんなランキングはくだらないと言えばそうだが、その理由が大学における教育の質に起因するのではないかということに当時の関係者が気づいたのだろうと思う。
慶應義塾は湘南藤沢に横断的に学問を行う2つの学部を作った。色々な試行錯誤を続けながら結局社会で大きく評価されるようになった。そのほかにも教育にずいぶん力を入れているとみられたのだろう。
対して早稲田は長く、卒業生が「オレは早稲田には何もしてもらっていない」と言ってのけるような状況(これは私の従兄弟2人が私に直接言った言葉である)。
それについては、こんな本を読んでいたことを思い出した。
91年に産経新聞で連載された記事をまとめて92年に出された本である。私は初版本を読んでいて、手元に残っているが、その後文庫化されるほど売れたようだ。
その冒頭に、「早大政経だけには行くな」と言われていたという話が上がっている。教育の質の低下をズバリ突いた厳しいルポ。これでは長期低落は免れないと考えた早稲田大学の、社会に対する高らかな宣言。それが冒頭で紹介した本書である。
ちなみに本書では「もっと早い時期から改革を始めていた」とあるが、そのことについては当時は全く門外漢であった自分にはよくわからない。首肯する資格はないし、否定する根拠もない。だがそんなことは今となってはどうでも良い。
当時は英語教育の「テュートリアル・イングリッシュ」という科目が軌道に乗った頃であった。現在はそれに「アカデミック・ライティング」「数学基礎プラス」「情報教育」「統計リテラシー」という4部門が加わっている。その「数学基礎プラス」の担当として採用されたのが自分である。
この本を読んで6年後、今の私のポジションが新規にオープンになったのを知った自分は、本当にうれしく感動した。そして是非その仕事をしたいと思ったのだった。
現在はまだ目一杯それに関われているわけではないが、この感動を思い出したくて、最近本書を古書で再度購入(とっくに絶版)。手元にあった92年の本と合わせて、改めて読み直している。
これが今の早大教授たる自分の原点なのだから。
2015-04-20 11:47
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